【感想・ネタバレ・考察】アス/Us  アメリカの貧困問題と差別を見せる社会派ホラー

5

ここでは今の時点で英語と日本語でも考察されていないことも含めてアスについて語っている。

アスはただ見ただけだと一般的なホラー映画とは違い社会派なメッセージを含んだ映画であり、貧困者をきちんと見ていない社会、特にアメリカの黒人が抱えてる問題を扱っている作品だ、となる。
アメリカという国は貧困者を置いてけぼりにしてきた現実があり、みんなが同じような生き方をしてきたと考えるのは幻想でみんなの気づかない盲点があるんだよと言っている作品。

メッセージはまるで映画ブラインドスポッティングにも似ていてこの映画をホラー映画にしたような作品だ。しかし実はアスにはファンタジーも含まれていてただのホラーではない。さらに宗教がたくさん関わっていて神話まで登場し強烈な抗議のようなもので、そして抗議を含むアートパフォーマンスな映画なんじゃないかと思う。普通に映画を見ただけでは分からないし気づけないことがたくさんあるし日本人ならアメリカのことと宗教のことを調べない限りなおさらわからないことが多い映画だ。僕も一度見ただけでは分からないことが多くて映画を見直して調べて考えてやっといろいろ見えてくる。とりあえず人種差別、貧困問題の視点から一般的に言われていることも含めて説明、まとめ、引用しながら世界でまだ考察されていない「Us」について解説していこうと思う。ちなみに古い映画には詳しくないので映画視点、エンタメ視点での考察は十分にはできていないと思う。つまり映画視点、政治視点、歴史視点、宗教視点などさまざまな見方ができる映画だと思う。

ネタバレ・考察

宗教、黒人差別、「Us」に関する様々な事例や他の要素が組み合わさり光と影を演出していく。主人公の世界は光でありクローン人間は影。
映画の最初に見せるテレビシーンは映画で言いたいことが詰まっていると思う。

見て名前が分かるものだけをいうと左側の棚にはC.H.U.D(チャド)、グーニーズ、2つの頭脳を持つ男(The Man With Two Brains)、右側にはライトスタッフ(The Right Stuff)、エルム街の悪夢(Nightmare on Elm Street)、真ん中のテレビがHands Across America。この説明をするまえに簡単に映画の内容をいうと、

映画は主人公の黒人一家は貧乏でない生活をしていて、そこに主人公達のクローンが現れて殺し合いが始まる。世界中で同じくクローンは現れ本物を殺して世の中を乗っ取るという話。そしてみんな手をつないでHands Across Americaで裕福な人たちが行ったことと同じことをする。これは見えざる貧困が革命を起こす話であり、アメリカの盲点、光と影の話だ。
映画の一番最初に「アメリカの下に数千マイルのトンネルがある。放棄された地下システム、使われていないルート、無人の炭鉱、この多くは全く目的を知られていない。」とある。このみんなが知らない気づかない盲点がアメリカにはたくさんありそこから問題が発生するというメッセージだ。

ビデオの説明をしていくと、グーニーズは気づかいない場所に広がる地下世界の話であり、2つの頭脳を持つ男は映画アスが見せる二面性を示唆しているようにも思う。エルム街の悪夢は右手に手袋をはめたも殺人鬼が夢の中で人を殺すという見えないところに何かが起こるということ。さらに映画アスで見せるマイケルジャクソンのTシャツが出てきて、マイケルは光と影のアイコンでありマイケルが片手に手袋をはめていたこともあり、マイケルの真似をする人も出てくる。この手袋はエルムの悪夢からホラーのアイコンでもあり、マイケルが見せる対比のアイコン。そのためクローンたちは表の人とは違う色のグローブをはめている。

手袋をしている女性↓

ライトスタッフという映画は有人宇宙飛行計画マーキュリー計画の宇宙飛行士を称えた映画で栄光と賞賛に溢れている。表では栄光に溢れているのに裏では絶望している人がいるのに気づかない人たちが多いという意味があると思う。

The Right Stuff (1983) Official Trailer – Ed Harris, Dennis Quaid Movie HD

これと同じく真ん中のテレビのHands Across Americaは実際に当事1986年のテレビ放送で明るい一面だけを見せていたらしい。これを見た監督は怖いと不快感を感じたそうだ。英語記事
みんながホームレスやアフリカのかわいそうな人たちのために手を取り合って助けようとしながらも何も変わっていない現状に、ユートピアに浸っている人たちが多く現実を全く見ていないことに気持ちが悪かったのだと思う。

Hands Across America 1986

現在でも変わっていないからこそ監督は映画Usにメッセージを込めたのだと思う。僕もアメリカは栄光や勝利に包まれたユートピアが好きな人が多いと思っている。アメリカで大人気なマーベルヒーローズは明らかに極端なまでの栄光と勝利を見せている。これがいけないわけではなく、ここから見えることは資本主義社会で成功を勝ち取った人たちが見せる共産主義的な一面が見えてくる。資本主義は人に社会があることを忘れさせ、共産主義は人に個人の人生があることを忘れさせる。共産主義に偏りすぎているのが中国であり中国アートは栄光に包まれた作品が好きな傾向があると思う。それにアメリカは各個人の分断が強くてまとまるには愛国心を持ってくるしかないんだと思う。だからHands Across Americaっていう愛国心にも満ちたことって受け入れられやすいし、愛国心の裏で忘れられている人たちがいるっていうのはアメリカの問題の大きな問題だと思う。

中国昔のアートの一例 みんなのため、国のために協力しあうといった感じだと思う。映画アスは全体主義の批判が含まれているので共産主義中国の全体主義の批判がもしかしたら含まれているからクローンが赤色というのもあるのかもしれない。中国共産主義批判にもなりそうな話だから中国で公開されないんじゃないかと思ったところ中国ではすでに公開されているっぽい。中国は共産党批判のあるものはDVD販売はあったとしても上映を避ける可能性があるので批判が含まれているのかもと疑いがなかったのかもしれない。もしくはたいしたことないって思ったのかもしれないけど。

またHands Across Americaの映像には農業などのシーンなどがでてくる。これは共産主義的な考えがあり過去の共産主義を愛国心を含めて懐かしがる人が好きな映像だと思える。ホラー映画ハウス・ジャック・ビルトではジャックは中国、ソ連の共産主義の時代に憧れている様子で、農業などを行う昔の労働環境が懐かしく思っている。

アメリカがおかしな全体主義に走っているんじゃないかというメッセージだけどアメリカは全体主義もありながら極端な個人主義だと思う。ステレオタイプにまとまれることはまとまるけど普段は個人主義だから難しいことにはまとまれなかったり、個人が強すぎて分断が起こるんじゃないかと思う。それせいで黒人差別は変わらずあるし貧困な人はその人のせいでそうなったんでしょ?という自己責任論も今まで強くあり助けてくれないという話になる。集団と個人の考え方(資本主義社会と共産主義的な考え方)の偏りが問題なんじゃなかとも、もしかしたら監督は言っているんじゃないかと思う。

そして車のガラスに描かれているアートには皮肉が込められていると思う。笑顔で幸せそうに手をつなぎ合ってみんな幸せとかいうけど全然わかってないよっていう意味だと思う。

次はにチャド(C.H.U.D.)はニューヨークの地下や下水道に住んでいるホームレスがいて、そこにゴミや放射能物質など投棄している人がいてホームレスがモンスターに変化してしまい人を食べる、襲うという話である。同じ人間なのに人間扱いされない人達がいて大きな貧困格差を見せている。人を食べるということでカニバリズムもポイントだ。映画アスではクローンたちはウサギを生で食べるらしい。

また映画では主人公アデレートがクローンに息子ジェイソンをさらわれクローンのいる場所に一人で向かう。そのときに地下に降りていてエスカレーターに乗る。これはチャドの地下鉄に住むチャド化したホームレスに会いに行くようなものだと思う。今でも地下には忘れられている人たちがいるんだということ。クローンの反乱だけどチャドの反乱のようにも見えてくる。
トンネルの中を通過しているように見え、ウサギのいる部屋もトンネルのようになっているため映画の最初であったアメリカの下に無数の使われていない地下鉄などがあるというのとこのシーンはかぶせていると思う。

ここまでが映画の最初のあったビデオテープから分かることだ。
そして次にいくつかの謎を考察していく。

地下にウサギがいることから分かる様々な意味

ウサギには多産の意味は昔から宗教でも使われたりする。
宗教画↓

世界中で行われるイースターエッグというキリスト教の復活祭でもウサギは使われ多産、豊穣のアイコンなため縁起の良い意味がある。

しかしウサギには他にもいろんな意味があるのだ。
一つは監督がウサギをペットとして飼っていてウサギには二面性があると思ったことだ。英語記事

「ウサギはかわいい容姿とは裏腹に爪で人をひっかくこともある。見た目じゃ分からないということだ。」

監督は語っていないが僕はウサギにある共食いの性質も映画に組み込んだんじゃないかと思う。チャドも人を食う、クローンも同じ人を殺すしウサギを食べるらしいし。
ウサギはストレスを溜め込むと子供ウサギを食べたりする。見た目からは想像できない怖さを秘めている。

さらにウサギは今でも実験で使われたりするためクローンという人間を実験として使っているというメッセージがあると思う。これにはいくつか事実がある。アメリカでは1932年から1972年まで貧困の黒人に黙ってタスキギー大学が政府主動で梅毒の実験を黒人にしていたということである。また映画アスでは主人公アデレードのクローン、レッドが「私達は神によって試されたんだ」と語っている。実験を思わせるセリフだ。またこのセリフから神を信じていることもわかる。この神については後で説明する。

そしてナチスのラーフェンスブリュック強制収容所では残虐人体実験を受けた女性をウサギと呼ばれた事実もある。

また映画でウサギの色が白が多いのも黒人が差別されているマイノリティだ、表にいる白い人たちは黒い存在に気づいていないということなのかもしれない。主人公達が行ったサンタクルーズビーチも白人がほとんどのエリアでHands Across Americaでも白人がほとんどということも関係していると思う。

ウサギとクローンを同じような存在として扱っていてクローンがウサギを食べることで共食いであり、地下にいるクローンの動きはゾンビのような動きでゾンビは人を噛み切るから共食いがあってもおかしくない設定だけど、もう一つ意味があると思う。それはキリストの最後の晩餐である。映画では最後の晩餐は出てこないし監督も語っていない。しかしキリスト教と関係ある内容を見せる映画なため最後の晩餐も含まれているのではないかと思うのだ。

僕は旧約聖書を見たことないけど聖書について語っているブログで言われていることは共食いがあるということである。

「わたしは命のパンである。あなたたちの祖先は荒れ野でマンナ(神が民に与えた愛の食べ物)を食べたが、死んでしまった。しかし、わたしは、天から降ってきた生きたパンである。このパンを食べるならば、その人は永遠に生きる。わたしが与えるパンとは、世を生かすためのわたしの肉のことである」(第6章46節)

「人の子の肉を食べ、その血を飲まなければ、あなたたちの内に命はない。わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者は、永遠の命を得、わたしはその人を終わりの日に復活させる。わたしの肉はまことの食べ物、わたしの血はまことの飲み物だからである。わたしの肉を食べ、わたしの血を飲む者は、いつもわたしの内におり、わたしもいつもその内にいる」(第6章53節)

キリストの血肉を食べることで弟子達にキリストの魂が移り、キリストが憑依したかのような話になる。全知全能感を高め神に近い存在に感じさせることだろう。それが見てわかるのがレッドがレッドが「私達は神によって試されたんだ」と語っているシーンは全知全能を感じる表情をしていると思う。レッドはクローンでなく表で生きいたアデレード本人であり命掛けの反乱や革命を起こそうとする人は全知全能感が高まっていてもおかしくはない。ホラー映画ハウス・ジャック・ビルトのジャックは自分が神のように考え人を殺していくように。
ウサギを食べることが最後の晩餐のような神の憑依の儀式みたいなものだったのではないかと思う。映画アスは反乱を通じて世界が覆る話なため世界の最後の日、最後の晩餐なんだと思う。クローン達にとってキリストの聖戦のようなものじゃないかなって思う。ちなみにレッドは涙を流すため心と魂があるのだ。

涙を流しながら神に試されていたんだ、というレッド↓

心がここに無いような雰囲気が出ている↓

出典:IMDb

またゾーラが着る服がウサギなのは気づいている人は多いと思うが、ベトナム語でThỏはウサギというのも隠されている。監督はアメリカ国内だけでなくアジアからも映画にメッセージを取り込んでいると思えてくる。

ちなみにジェイソンのマスクはスターウォーズのチューバッカかと思ったけどスリラーと関係して狼男なんじゃないかと思う。
出典:IMDb

ネットで有色のウサギが三匹いて三角形に並べられている、と言われているのを見てさっそく確かめてみた。暗いシーンだと分かりづらかったのが明るいシーンでみるとハッキリ三匹の色違いのウサギがいた。僕の解釈だとこれはアート的に言えば三位一体(トリニティ)の逆で恐怖と不安定を示していると思う。三角形を逆にすると安定して立たないのでそこからアンバランスをさを感じ不協和音、恐怖という感情が生まれるというトリックがある。ムンクの叫びなどは逆三角形の沿って描かれているため恐怖を感じるというトリックがあるのだ。ウサギの並び方は美術視点から恐怖を感じさせようとしたに違いない。

ムンクの叫び

そしてアート視点からでなく宗教視点でいえば三位一体は逆三角形でも神を表わす意味がある。父=天の父 子=キリスト、精霊=たぶん見えない不思議な力
この三つが合わさって神ということ。

天の父=アブラハム(ゲイブ)アブラハムはキリスト教の信仰の父。アブラハム(Abraham)エイブラハム・リンカーンと同じスペル。そのためアメリカの奴隷解放の父と呼ばれることも関係しているかもしれない。

精霊=ウサギでありアンブラ(ゾーラ)、ウサギは実際にウサギは精霊と思われていた歴史があり、アンブラはギリシャ神話の英語でシャドー影の意味で精霊であり幽霊。そのためゾーラはウサギのTシャツを着ているんじゃないかと思う。

子キリスト=プルート(ジェイソン)、ジェイソンは子供でプルートの意味はローマ神話の冥界の神、死者の神。プルートが骸骨にも見えるマスクをしているのは恐らく死者を意味しているのかもしれない。ちなみにジェイソンが着ていたジョーズのTシャツは見えないところから襲ってくるというものを表わしてはいるが、実はサメはアメリカのネイティブハワイアンの神話で守護神カモホアリイということも関係しているかもしれない。そしてディズニーのプルートでありプルートの話の中で「プルートの審判の日」(Pluto’s Judgment Day)というのがあってプルートが悪夢を見る話。寝ているすぐ横には火がついている暖炉があることからプルートが暖炉に火をともすことと関係があるかもしれない。

最後に三つ合わさって神となるレッド。なぜレッド(赤)が神なのかというとアメリカにはGod Is Red(神は赤い)という書籍が出ており、読んだことはないけどネイティブアメリカンの神話でありアメリカ原住民が神は赤いと考えていたということが関係しているのだと思う。

また三位一体って他の映画でも使われているからたぶん三位一体の使われ方としては映画あるあるな使われ方なんじゃないかと思う。監督は映画好きだからそういうテクニックやアイデアを他の映画から取り入れているんじゃないかと思う。例えばマトリックスでも三位一体が使われていたわけだし、主人公はネオ(NEO)はOneの文字をいじった名前でThe Oneは神。

Mickey Mouse – Pluto's Judgement Day – 1935 (HD)

ウサギには宗教上の意味があり黒人のマイノリティとも合っていて、ウサギの性格なども対比という点があり地下はアメリカの問題がある場所だからこれらの理由からウサギを採用され地下(ウサギの穴であり)にウサギがいるんだと思う。そしてウサギを三位一体の逆の形に並べるのは明らかに宗教的なメッセージがあり、逆三角形から恐怖を表わしている。

Jeremiah 11:11からわかること

様々なレビューでJeremiah 11:11が旧約聖書から引用されたものだというのは知っている人も多いだろう。実際に監督もインタビューで聖書から引用していることを公言している。この聖書の文をどう解釈するから考え方が変わってくる。

エレミヤ書11が言っていることは「契約は破棄」されたということである。ちょっと長くなるので下記のエレミヤ書はスキップしたい人はしたほうがいいだろう。エレミヤとは預言者のこと。


「ユダの民と、エルサレムの全住民に、わたしが彼らの先祖と契約を結んだことを思い出させなさい。その契約を守らない者はのろわれる。

 わたしは、エジプトの奴隷だった彼らを助け出した時、わたしの言いつけを守りさえすれば、彼らも子孫もわたしの民となり、わたしは彼らの神となると言った。

 だからわたしに従いなさい。そうすれば、誓いどおり、すばらしいことをしよう。今日あるとおりの『乳とみつの流れる地』を与えたい。」これを聞いて、私は「主よ、ぜひ、そうしてください」と答えました。 

すると、主は命じました。「以上のことをエルサレムの町中で、大声で伝えよ。国中の町々を巡って、『私たちの先祖が神と結んだ契約を思い出し、約束どおりに行え』と言うのだ。 

わたしは、おまえたちの先祖をエジプトから助け出した時から今日まで、繰り返し、『わたしのすべての命令に従え』と言い続けてきた。 

だがおまえたちの先祖は、従うどころか聞こうとさえせず、頑として、好き勝手にふるまった。彼らが従うことを拒否したので、わたしは契約の中にある災いをみな下した。」

 神はまた、私に語りました。「わたしは、ユダとエルサレムの住民の間に、わたしに対する陰謀があることを知った。

 彼らは先祖の道にあと戻りし、わたしの命令を破り、偶像を拝んだ。わたしが彼らの先祖と結んだ契約を破棄したのだ。

だから、彼らに災いを下す。それから逃げることはできない。あわれみを叫び求めても、わたしは耳を貸さない。

 彼らは、偶像の前で香をたいて祈る。だが、そんなことをしても、悩みと絶望からは救われない。

 ああ、わたしの民よ。おまえたちの神々は町の数ほど多く、バアルに香をたくための恥ずべき祭壇は、エルサレムのどの通りにもある。

だからエレミヤよ、もう、この民のために祈ってはならない。彼らのために、泣いたり嘆願したりしてはならない。わたしは、彼らが追い詰められ、助けを求めてきても、耳をふさぐことに決めた。


人々は彼らの祖先が神と結んだ契約を忘れてエジプトで奴隷として苦しんだ不平等から神によって救われたのに神への陰謀を企てているから契約破棄なため神が破壊をする、という話である。つまり「国家は神とその歴史を忘れており、神は破壊することにした」ということだ。
神とはここでは破壊を起こす存在なのでクローン達のことだと思われる。これは様々なキーワードからクローンが神の存在のような位置づけに置かれていると思う。上でも説明してきたが、最後の晩餐のカニバリズムからは神になることを読み取れ、レッドが「神に試されていた」というのもレッドの神の信仰心の表れであり神にもなれると思っている可能性もある。下でも説明しているが映画には神話がでてきてクモ女の話がでてくる。それは人間を作り出した存在であり、クモはゆっくり忍び寄ることから恐怖を起こすクローンの存在を意味しておりさらに神のような存在とクローンをかぶせていると思う。
また後でもう少し述べるが黒人が信じてきたキリスト教は黒人を奴隷にするための宗教だったこともあり、神は奴隷を解放したはずなのに黒人は奴隷であり黒人へのキリストの教えも奴隷の勧めだった。それでもキリスト教を信じる黒人が考えそうなのが恐らく、キリストは幸せになれることを教えて信じ込ませた(契約した)のに全く幸せじゃない。それは契約破棄と同じだからエレミヤ書で書かれているいるように破壊を起こすということ。
クローン達は政府によってコントロールされるようにされたけど捨てられた存在で、捨てられても従順になるようにさせられていたけどそんな約束事は破棄だと考え行動したのがレッドなんじゃないかと思う。ドッペルゲンガー達だけでは捨てられても従順すぎて行動に起こせない(黒人がキリスト教によって白人の奴隷を教えられ奴隷は奴隷思考から抜け出せなくなるように)、でもレッド(表の人)がきてドッペルゲンガーを引っ張っていける人が来てみんな考えが覚醒されていくんだと思う。結局黒人の歴史もリンカーンというリーダーが現れて奴隷を解放させないと世の中変わらない現状があったわけだろうし。

他には11:11はアメリカの伝説のハードロックバンドのブラックフラッグのマークでもある。
無政府主義の意味もあるらしく反乱を起こすクローンたちに意味が合っていると思う。ちなみにこのバンドのTシャツは双子の姉妹の片方の子が着ていた。

出典:IMDb

さらに11:11には天使や神からのメッセージという意味や特別な領域という意味も含まれている。エンジェルナンバーという。天使や神からのお告げのような話だ。アメリカではこのナンバーをあえて選ぶ人はいて車のナンバー、住所、ユーチューブビデオの長さなど。

そしてJeremiahは映画で実際に登場していることを知らない人は意外と多いかもしれない。
家族がビーチに向かった先で救急車に運ばれるおじさん。この人はホームレスで手元に「Jeremiah11:11」と書いたものを持っている。そして砂浜で手を広げて立つ人がこのホームレスのクローンでこのクローンの名前がJeremiah、殺された人がアランだ。なぜわかるかというとエンドクレジットに名前が出てくるのとIMDbにクレジットがのっていたからだ。ちなみに本名もアランという人だ。
Jermiah11:11は旧約聖書で災いが起こるというメッセージであり、Jeremiah本人が現れることで災いが起こり始めたということだ。
聖書ではエレミヤは預言者だけど、映画のエレミヤはホームレス。ちょっと笑った。
胸元に流れる血の形が11に見えなくもないのも面白い。

出典:IMDb

額に11:11が刻まれている↓

Alan Frazier本人のプロフィール写真↓

出典:IMDb

エレミヤ書11は災いが起こるというだけの話でなく契約破棄されたから神が破壊するということを映画のクローン達がやっているんだと思う。

クローンが着る赤い服から分かる様々なこと

赤い服にはマイケルジャクソンのスリラーの服装にかぶせているところはあると思うがそれだけではないと思う。映画アスは理由が一つだけじゃないと思うことがたくさんありそこがこの映画について考えることを複雑にさせていると思う。

アメリカの囚人服でクローンのような服を着る人は多い。ほとんどはオレンジ色だけどキューバの悪名高いグアンタナモ湾にある収容キャンプの囚人服は赤い。

またこのキャンプの閉鎖を求めて活動家がオレンジの服を着て抗議。そのためクローンの服には抗議の意味と囚人服の意味があると思われる。

出典:afpbb

また映画では神話からも引用していると思われる。主人公が子供時代にミラーハウスに入りそのときに流れているアナウンスはネイティブアメリカの神話ソツクナングとクモ女の話をしている。これは創造主タイオワがソツクナングという人物を作って人間を作るように命じ、ソツクナングはクモ女と協力して人間をつくり、その人間が堕落するたびに何度も世界が滅んだという神話だ。滅びは第一から第四まであるらしく第四は赤い蟻のような人々が現れてアメリカを滅ぼすという話だ。
そのためクローンは赤色を着ているんじゃないかと思う。またクモ女絡みでクモのプラスチックと本物のクモも出てくる。クモのように静かに恐怖はやってくるんだと思うしアデレードが子供の頃にミラーハウスで口笛を吹く曲がItsy Bitsy Spider(小さいクモ)。神話のクモ女のように人間を新しく作るんだって意味もあるかも。クモ女が世界秩序を作ることからクローンが世界秩序を作るんだっていうこともあるかもしれない。なぜネイティブアメリカンなのかというとアメリカはアメリカ原住民を殺してできた国なのでミラーハウスは自分たちを見つめ直せという意味があるのだと思う。そのためミラーハウスの看板にはFind yourself(自分自身を見つける)と書かれてある。またVision Quest とかかれているのはネイティブアメリカンの大人になる儀式でどう生きるべきかを見つけ出す儀式らいし。その理由もありVision Quest Find yourselfと書かれている。

それとたぶん監督はアニメ好きみたいなのでジブリのゲド戦記のクモも関係しているんじゃないかと思う。クモは魔法使いだけど手足がクモのように長い。英語ではCobという名前で全くクモではないけど海外ではアニメ好きなら日本語の名前と意味を調べている人は多い。クモの設定と映画アスが似ているのはアニメ好きの監督がクモの意味を調べてゲド戦記にあった二面性をタブらせたんじゃないかとも思えてくる。もしかしたらゲド戦記の原作のほうかもしれないけどアニメのほうだと思いたい。そしてゲド戦記にはドッペルゲンガーのようにアレンを付きまとう影がいる。映画アスのドッペルゲンガーとかぶる。
ゲド戦記ではクモは人間の欲望の表れであり人間の影の部分だった。
クモがいう「均衡は既に我ら人間の手によって破壊されつつある」
アレンはクモに対して「クモ、お前は僕と同じだ、目を覚ませクモ。怖いのは皆みんな同じなんだ」

クモが言いたいことは人間の欲望こそ世界の均衡を乱しているということだった。映画アスで言えば、表は欲望が集まったもので、でも裏(影)もあるのに誰も気にしないことで表の欲望と裏との間で溝が広がり人間社会の均衡が乱れていくといった感じ。影の存在(ホームレスなど見えないもの)に怯えることなんてない、みんな同じなんだということ。
アスにあったクモの置物と本物の二つの欲望が存在し、大きな黒いクモ(影)が存在していて襲い掛かろうとしているのを見せているんじゃないかと思う。映画で見せる様々な伸びた影のシーンにも同じことが言える。

さらにワンピースではルフィは影をハサミで切り取られ切り取られた影を死体にいれるとゾンビになるというのがある。影は人間に付きまとうもう一つの魂でありゾンビの魂として使われる。映画アスのクローン達がゾンビみたいなのはスリラーだけじゃなくそういうところからもアイデアを取り込んでいるかもしれない。

そしてネイティブアメリカンの神話に話を戻してこの神話では太陽が昇ると人間達が固まり生命を持つものとなるらしく、主人公のクローン、レッドは信仰心を強く持っているというのは上でも説明したが主人公のアデレードとレッドが地下で会ったときに見せる黒板のアートには中央は太陽のようなものがあり周りを人が手をつないでいる。ここからは太陽崇拝があるのだと思えてくる。クローンから人間になるんだ!という強い信仰心から出るメッセージなんじゃないかと思う。さらに太陽というのはネイティブアメリカの神話で重要な要素で太陽の神がいるのはもちろん、黒板のアートは太陽の石を表現しているんじゃないかと思う。ネイティブアメリカンの神話に出てくる太陽神は体が赤いことや、アメリカ先住民は肌が赤み赤みがかっていたり儀式で赤色が使われることからレッド達が着ている服の赤色はネイティブアメリカンの意味も込められていると思う。

ネイティブアメリカンでもあるアステカ人が使ったのカレンダーの太陽の石↓

太陽神トナティウ ↓

出典:Etsy

子供時代にミラーハウスはシャーマン ヴィジョン クエスト(Shaman’s Vision Quest)と書かれていてネイティブアメリカンの神話を連想させる。インディアンの絵があるためミラーハウスの中でもネイティブアメリカの神話が流れる。反対に大人時代のミラーハウスはマーリンの森(Merlin’s Forest)とあり魔法使いに変わっている。この意味は恐らくケルト神話アーサー王の話で魔法使いであり預言者マーリンの話ではないかと思うのだ。

出典:IMDb

この世界にある有名な森とはブロセリアンドの森でありその中にある「帰らずの谷」があり谷では魔女モルガンによって囚われの身になるという。こんな危険な森の中にマーリンは入り妖精に出会う。実際にマーリンの森というミラーハウスにアデレードが入ることでウサギに出会う。これは妖精なんじゃないかと思う。この妖精という考えには他の例もあってウサギのお守りのような商品が世の中にあってWikipediaによるとウサギの後ろ足などがその例。ウサギは地下に住む精霊と交流していたと書いてあるので昔は妖精のような存在だったんじゃないかと思う。そしてエスカレーターで地下で降りるシーンは実は神話からも意味を取り入れており魔女モルガンが住む帰らずの谷に向かっているという意味もあるのではないかということ。アデレードは鉄の棒を持ってレッドに立ち向かうのだけどこれは世界を征服を企もうとする魔女モルガンと対決した円卓の騎士ランスロットを表わしているんじゃないかと思う。Wikipediaによるとモルガンはキリスト教の修道院で修行し妖術を身に着けるので映画アスのキリスト教と関係している。アーサー王の話の中で出てくる太陽には力があり、レッドが黒板に作った太陽の絵は太陽の加護があるように見せているのではないかと思う。それとウサギにあるもう一つの意味があってそれが魔女。魔女はウサギの姿になったと昔では考えられていて不吉な存在で魔女狩りと関係している。この点からもレッドは魔女モルガンなんじゃないかと思う。
貧困、反乱、黒人差別などを見せている映画だけど実はファンタジー要素も含まれているのかもしれない。
でも映画では突然ファンタジーを持ち込むのはちょっとちぐはぐな話に見えてくるけど、アデレードとレッドが地下で会って戦うシーンはバレエダンスが出てきたり音楽もいい感じでどこかアートっぽい。アートと考えればファンタジー要素、不思議の国のアリスのようなワンダーランドのような世界でも変ではない。この映画は手をつなぎ合ったアートパフォーマンスを最後に見せるわけだしアートも重要なんだと思う。
ちなみに今思えば映画は最初からファンタジー世界を見せていたと思う。まずジェイソンは炎を使うマジシャンのようなものだし、そこから考えるとゾーラはゴルフクラブを持って姉妹ドッペルゲンガーと戦う戦士、父親ゲイブは騎士団長みたいな存在でアデレードはリーダー。

実は貧困問題やアメリカの問題を見せたいだけじゃなくて監督は要約すると「モンスター神話を作りたかった、ホラー映画だけど僕の映画への愛があってひねっているけどでも楽しいもの。」と英語記事で公開されている。英語記事
そのため映画ではたくさんの神話が使われいたのだろう。真面目な格差や分断、アメリカの社会問題に目がいきがちだけど実はそれだけじゃなかったのだ。ちょっと中二病を感じる 笑
まさかアデレードが持っていた鉄の棒はアーサー王の円卓の騎士のエクスカリバーかな?

映画の最後でレッドは実はクローンではなく表のアデレードが少女だったときにミラーハウスでクローンと会ったときに首を絞められ地下に連れて行かれクローンとアデレードの生活を入れ替わっている。アデレードは地下で生活をしながら表の生活を思い出し表の生活を知っているからこそ絶望を感じ、絶望の中で心のよりどころにしたのは宗教や神話だったのではないかと思えるのだ。

そしてレッドとアデレードが入れ替わったあとレッドはアデレードの家で人形遊びをしている。様々な動物がいて真ん中にウサギを置く。これはノアの方舟を表わしているんじゃないかと思う。恐らくホラー的な意味はなく多様な人がいていいんだ、だからといってほったらかしにするんじゃなくて本当の意味で助け合わないといけないんだという意味があるんじゃなかと思う。ウサギだけが最後に置かれることからウサギ(黒人、貧困者)だって忘れないでほしいということなんじゃないだろうか。そして横一列になっているのはHands Across America。

また黒人は歴史上、黒人だけに向けたキリストの教えたがあった。それは簡単にいうと白人に従うことが幸せだということ。けっして自由でない歴史がありクローンという自由でない人たち、特に黒人に焦点を当てていることは黒人の自由のない暗い歴史を物語っているようでもある。

そしてUsというタイトルにはアメリカでは黒人の自由と結びついた歴史がある。1991年Ice CubeがUsというタイトルで曲を出して黒人差別について歌っている。白人のBrother AliがUsというタイトルで自由になることを歌っている。
“Can’t nobody be free unless we’re all free
There’s no me and no you
it’s just us”
私たちがすべて自由でない限り、誰も自由になれない
私もいない、あなたもいない、ただ私達だけ

クローンのレッドは「あなた達は誰なの?」と聞かれたとき「私達はアメリカ人」と答える。何かのジョークかと思って笑えるかもしれないが、これは笑いを誘っているようで深いアメリカの問題が含まれている。US(United State)はアメリカでありUsというタイトルで様々な人がアメリカについて歌ってきている。
また1980年代にAppleⅡのスティーブ・ウォズニアックが将来のためにコミュニティ思考になるように音楽フェスティバル「US」を開催。

US FESTIVAL – HISTORIC FILMS ARCHIVE – 1982-1983

コミュニティ思考にさせる取り組みは現代に大きな効果を生んだと思う。世界中でSNSが流行り人とのつながりが非常に強いのが現代だ。この異常なまでに人とのつながりが強いことに危機感を覚えているのが監督なんじゃないかと思う。Hands Across Americaは怖いと思うぐらいだから現代社会の人とのつながりが強すぎるのに貧困が解決できないことに問題があるんじゃなかと思っているんじゃないかということだ。みんなHands Across Americaから何も変わっちゃいない。社会貢献した気になっているだけということ。

さらに1971年にウォルト・ケリーというアメリカの漫画家からPogoというアメリカのコミックが出ていてその中でも「We have met the enemy and he is Us」(敵に会ったんだけど、彼は私達だね)と言っている。Usとはアメリカで昔から使われる決まり文句のようなところがあるんだと思う。映画のタイトル「Us」は敵に会ったけどそれって僕らだねってこと。


「Us」はアメリカの問題であり前作のGet Outのタイトルを合せるとGet Out of the US(アメリカから出て行け)となり、アメリカから差別なんて貧困なんてなくなってしまえって言いたいんじゃないかなって思う。監督は白人の母親と黒人の父親の間で生まれているため様々な間が分かるんじゃないかと思う。アフリカ系アメリカ人の指導者キング牧師は「私達はここからどこに行くんだ?」と言っている。監督はアメリカ人は今からどこに向かうんだって言いたいんじゃないだろうか?

「Us」はアメリカを表わして私達を表わすのだけど「Us」にはアメリカにある黒人の問題と移民の国アメリカだから分断が多くてまとまりがないけど私達について忘れているところがあるんじゃないかということが含まれている。ネイティブアメリカを殺戮してアメリカを作ったけど今残っているネイティブアメリカだってアメリカ人だし、移民してきたばっかりのアジア人だってもうアメリカ人でどんな人でもすべて「Us」なんだってこと。もっと言えばメキシコからくる不法移民だってアメリカで何十年も生活していて彼らだってもうアメリカ人なんじゃないの?ってこともいえるかもしれない。今のドナルドトランプが移民に閉鎖的になっていて今までアメリカがやってきた大切にしてきた「Us」は危険な局面があるんじゃないのか?という話で、アメリカ人って外から来た人でしょ?違うものを受け入れないでどうするの?駄目な人(貧困、ホームレス、不法移民)を追い出すやり方じゃないんじゃないのかな?っていうのももしかしたあるかもしれない。監督がそう考えてそうだと思うのも監督の家庭環境で白人にも黒人にも相手にされないで生きてきたということも関係していると思う。そんなのけ者にもされた監督を含めて「Us」だよね?ってことだと思う。それらすべてを含めて「Us」で「Us」にはリベラルと皮肉なメッセージが込められている。なので単純に「私達」と「アメリカ」ではないんだと思う。リベラルと言ったのは不法移民だって受け入れてきたのがアメリカで白人至上主義のような差別する人をも受け入れて銃がダメでも銃の使用に賛成する人も多くいるごっちゃごちゃの社会がアメリカ。自由主義、無政府主義、犯罪者、囚人、英語をしゃべられない人、悪いことも良いことも全部含めて「Us」だと思うからともてリベラルだ。

赤い囚人服はちょっとだけ仏教の僧侶の色にも似ているように見える。1963年ベトナム戦争に抗議するために焼身自殺した僧侶(ティック・クアン・ドック)がいてこのシーンは映画アスのジェイソンのクローン、プルートが燃える火の中に入り死んでいくのとかぶってくる。しかも後ろには車があるのもかぶる。クローンは表の人と同じ動きをする傾向があるので表のジェイソンの動きに合わせて火にプルートは入ったんだけどプルートの死は黒人と貧困を見て見ぬふりするな、という抗議の意味を監督は含めたんじゃないかと思う。手を横に広げたまま火の中に入るのはまるで「見ろ!」や十字架を表わしているように見える。上で説明してきたようにプルートは三位一体のキリストだった、またアートで十字架が使われる場合キリストが現れたという意味でキリスト降架という。そのキリストが燃やされる意味はおそらく聖なる火で裁きの火でありすべての罪を清める火であり表のすべてを浄化(カタルシス)することのよう見える。そしてキリスト教でタブーとされている自殺を見せてキリストへの反乱=今までのアメリカ白人主義への抗議などがあるのではないかと思った。それはエレミヤ書の契約破棄にも通じる。この燃え上がるプルートのシーンは強烈な意味が含まれていると思う、宗教的にもアート的にもアメリカの歴史的にも抗議の意味的にも。

出典:IMDb

背筋を伸ばしたまま焼身自殺した僧侶ティック・クアン・ドック↓

ベトナム戦争の抗議を含めたのはおそらく監督がキューブリックに興味を持っているからではないかと思う。映画アスではキューブリックの作品シャイニングのオマージュがあるようにキューブリックの要素を取り入れている。キューブリックはベトナム戦争に関心を持っていたようなので監督もベトナム戦争について学んだんだと思う。キューブリックに感化されているとすれば映画アスのそれぞれのシーンは芸術表現と言ってもいいかもしれない。それぞれの構図だけでなく意味合いなども含めての芸術表現だと思うので普通のホラーではなく、さまざまな死や恐怖は意味があり知的な表現と言ってもいいかもしれない。監督のことをあまりしらなかったけどかなりすごい人かもしれない。

またアデレードが子供時代にミラーハウスに入る前にキャンディーアップルを落としている。恐らく聖書のリンゴを食べたイブがエデンから追放される意味があるんじゃないかと思う。このあと地下に引きずりこまれ表の世界から追放されるわけだ。

フリスビーが飛んでくるシーンがあるけど丸いフリスビーはマイケルジャクソンのTシャツの絵が丸いのにも似ていてマイケルジャクソンが裏と表のアイコンのようにフリスビーと水玉模様には裏と表の意味があると思う。マイケルジャクソンのスリラーのように輝かしい部分を見せながらフリスビーを取った裏にはゾンビがいるよということ。実際にクローンはゾンビみたいに動いている。フルスビーによって水玉模様は見えなくなるけどフリスビーを取ると水玉が現れる。星マークのフルスビーが象徴しているように表のアメリカを取ると裏ではスリラーのようなゾンビがいるのである。
さらになぜ水溜り模様かというとドット柄の絵はこの映画自体が点と点をつなぐゲームのような話で点と点が繋がってやってわかる話になっている。見る人がそれぞれ考えそれぞれの答えを出すことで答えは一つではないという意味であり考えて欲しいということなのだと思う。だから映画の終わり方が曖昧なんだと思う。

クローンの赤い服は恐らく映画シャイニングのオマージュでもあると思う。また双子は11にも見えるためエレミヤ書も関係があるのかもしれない。

ハサミからわかる様々なこと

クローンはハサミを持っていて普通に考えると貧困者が抜け出せない壁を分断するものなのかなって思うがそれだけではない。映画のポスターを見てみると分かってくる。
Usという二文字は二つの存在を分けているメッセージがある。Usの文字がハサミの持ち手にも見えてくるのも面白い。

分断された人というだけなく裏と表があるというメッセージをハサミから見てわかってくる。

さらにハサミは骸骨のようにも見えてくる。クローンが手をつなぎ影が伸びるところも影があるというメッセージだと思うのと映画ではいくつかのシーンで影が伸びているところがある。不自然にも影が伸びているように見えるところから影が徐々に大きくなって襲ってくるかのようにも見える。隠れたところから恐怖がやってくるという意味なのだと思う。
Usが右と左では鏡のように反対になっているため反対の存在を意味している。

ハサミはキリスト教でも使われた歴史がある。切り取るということに意味を込めていたのだと思う。下の参考写真は骸骨にも見える。今回映画で使ったハサミにはクリスチャンが使うようなデザインではないけどそこはあえて見せずに隠したんじゃないかと思う。

ちなみになんでドッペルゲンガー達が表の人の動きにリンクしているかというとたぶん影の存在だからだと思う。でも人間だし動きがリンクするのはおかしいと矛盾点があるけどそこは映画だからそういうもんだって思うしかないと思う。人間だけど影であってエルム街の悪夢のフレディのような裏の存在。

また監督はウサギの耳がハサミのように見えるとも語っている。英語記事

その他に気になったところ

ゲイブがボートを購入したけど中古で動かなくなってしまったり、ゲイブの片足をクローンに攻撃されダメージを受けてしまうのは映画サマーレンタルのオマージュっぽい。コメディ要素があり面白いんだけど、不穏な流れから悪いことが起きる予兆を見せていると思う。

Summer Rental – Trailer

さらに笑ったところがあってアデレードがクローンに突然引っ張られて家に引き込まれるんだけど、その引っ張られ方とクローンで出かたがコメディっぽかった 笑
ちなみに白人一家はとても裕福なためクローンに殺されたホームレスを除いて真っ先に殺されるんだと思う。ホラーのお決まりパターン。

4人の黒人一家に何か起こり黒人の父親がバットをもって立ち向かうシーンがあるがこのシーンはバックトゥーザヒューチャーパート2のシーンに似ている。

バックトゥザフューチャーパート2↓

どうしてもわからなかったのが暖炉のシーンにあったアートの意味。中央にでかでかと飾られているアートには意味があると思う。4人の人物が描かれており真ん中は黒人ぽいのと周りは人種が不明。何か幸せなシーンなんだと思う。もしかしたら火をつけたことで幸せな家庭を燃やす壊すという意味もあるのかもしれないし、3人が青色で1人だけ色があることからレッドはクローンじゃないんだよっていうことかもしれない。

出典:IMDb

それとこの暖炉のシーンは綺麗な構図に見えるため恐らく十字架や幾何学模様が隠されているんじゃないかと思う。この構図は科学的一点透視図法(ワンポイント・サイエンティフィック・パースペクティブ)が使われているように見えて、使われている西洋アートには最後の晩餐などがある。

この線はテキトウだけどイメージとしてはこんな感じ。

監督がこんな幾何学模様を考えていなかったとしてもカメラで一点透視図法の構図で撮影しているので一点透視図法を使うとそれなりに幾何学模様が見つかったりする。そこが綺麗に見える構図の理由だと思う。そんな綺麗な構図があるということは数学的にも綺麗という意味であり数学と宗教が密接なため個人的に奥が深いなーと思わされる。どういうことかというと全く映画では言われていないし監督も言っていないけど宗教が映画で使われているからその部分を面白く考えようとした個人的なことだけど、神は人を創造するわけで創造するには数学的なものがないといけない。幾何学模様を一定のルールに沿って作ることができるということは神、奇跡を意味していると西洋アートでは考えることができると思うのでレッドが神で三位一体の三人がいる暖炉のシーンは構図も神々しいんだなと思うのだ。というより思ったほうが面白いのだ。個人的に一点透視図法が好きな監督は西洋アートとかキリスト教のことが頭のどこかにあるんじゃないかなって思ったりもする。

これと同じでアデレードがハサミを丁寧に持っているけど何故?と思う人がいるかもしれない。これにも十字架がありこのポスターを見たときにもしかしこの持ち方はキリスト系が含まれる映画かな?と想像がつくわけだ。大切に持っているのは分断するための大切な武器という意味だけでなく宗教的にも深い意味があるのだと思う。

こんな感じのイメージ↓

ハサミにチェーンがもしついていればキリストのロザリオなんだけどそれはないからちょっと残念。ロザリオのほうがカッコイイから 笑
アメリカはキリスト教徒が多く十字架とアメリカは強く結びついている。お墓には十字架が立てられ外では教会がいくつもあり日曜日には教会に行く人たちがいて、黒人のキリスト教はゴスペルなどを歌うように独自に進化してきたわけでアメリカの黒人と白人について述べるうえでキリスト教は重要な要素なんだと思う。これらをオカルトというのはちょっと違うと思う、なぜなら本当にキリストを信じている人がいてネイティブアメリカンなどの神話を信じ守り続けている人もいてそれらがないとアメリカではない。レッドが行っている黒板に書いている儀式みたいなことも意味がある。オカルトのように意味がわからない異様なことが起きるわけではなく本当の悪魔が出てくるわけでもない。

結局のところ最後はクローンが表の人を殺して手をつなぎ合っていてそんな状態でもアデレードはすべて解決したという。それはアデレードが元々クローンで二つ分かれていたものを一つにしたのだから終わりになり本人は良い生活をできているのだからいいのだということだと思う。流れる曲もミニーリパートンの曲でHand Across Americaで実際に使われたとか話があるけどその映像が見つからない。それでもとても幸せそうな曲でホラーとは思えないエンディングになっている。

Us – End Credits Song (Les Fleurs – Minnie Riperton)

音楽から見えてくる映像の意味

アデレードとレッドが対決するときに流れる曲はチャイコスフキーのくるみ割り人形のパ・ド・ドゥという曲をアレンジしたものらしい。作曲したマイケル・アベルズは少し意味を語っている。英語記事
アレンジでベースになっている曲がCLUB NOUVEAU – Why You Treat Me So Badだそうだ。高音と低音の絡み合いで出来ているこの曲は二重性がありレッドとアデレードのダンスファイトに合っていると思ったらしい。パ・ド・ドゥはバレエに使われる曲なためアデレードとレッドはバレエをしながら戦っているということになる。黒人って踊ることが好きだったりダンスして電車内で小銭を稼ぐ人がいたり黒人って白人よりダンスをする人が多いイメージ。

CLUB NOUVEAU – Why You Treat Me So Bad (1987)
Pas de deux | Us OST

くるみ割り人形に関連してテーブルに置かれている入れ物の柄もくるみ割り人形だったりする。

インタビュー記事によると最初にウサギが出てくるシーンで流れる怪しげな曲はAnthem(国歌、聖歌)という曲。歌詞は主にドレミファソラシドだ。

要約すると

「悪魔の行進のような曲にしたかった。悪意のあるものが近寄ってくることを知っているかのように。監督がやりたかったことは安全だと思うところが実は違うということ。子供の声で歌うことで恐怖を感じる。歌詞は組織しているものがあることを伝えたいけど観客に理解してほしくないから言語に意味を持たせていない。レッドが私達はアメリカ人だ、というように行進させることをイメージさせている。国家は多文化のグループの行進なんだ。」
さらに別の記事によると監督ゴスペルホラーのような音楽を要望していたらしい。黒人が歌う賛美歌・聖歌である。

ちなみに僕にとってはドレミファソラシドを歌うことは人はそれぞれ音階のように色があり表とは違う様々な忘れられたものが集まった反逆集団が行進していくように聞えてきて怖かった。それと国歌、聖歌(Anthem)というのは時々百合の花で例えられる。清らかで美しいということだ。なので映画アスは不気味な音楽だけどAnthemというタイトルから裏の意味は美しさがあるのだと思う。百合は聖母マリアであり聖母マリアからの祝福なのだ。苦しさもあり恐怖感を与えながらも美しさ儚さもある複雑なテザードのおかれている感情が出ている曲だと思う。歌詞がドレミファソラシドでなく聖書から引用していたらものすごかったと思うけど残念。

"Anthem (from US)" by Michael Abels

プルートに隠された謎

プルートとジェイソンは入れ替わっていた、入れ替わっていないという考えがある。僕は入れ替わった説のほうが楽しいので入れ替わったとして考えた。

入れ替わっていると考えると入れ替わっているとわかるような行動がジェイソンからは見えてくる。

・ジェイソンが無口すぎるのは地下の人だったから。それとアデレードも話すのが得意でないということを言いそれは地下の人だったという意味があったのと同じでジェイソンは入れ替わった可能性がある。

・ジェイソンはビーチでトンネルを掘る。しかもただのトンネルではなく本人は馬鹿げたトンネルだ(Just a stupid tunnel)と双子姉妹に答える。地下の変なトンネルを知っているから思い出して作っているんじゃないかと思ったりもできる。

・ジェイソンはビーチで双子の姉妹に「あなたの弟ってとても変」とゾーラに言われる。すでに行動がおかしいということ。

・ビーチから家にもどり、夜ジェイソンはアデレードに「見て」と指差した先が時計11:11。ジェイソンは11:11の意味を知っているかのような行動でその意味はジェイソンが事件が起こるのを知っている。

・4人のテザーが目の前に現れたときに真っ先に何者かを答えたのがジェイソン。「私達だ」と答える。なぜジェイソンはすぐに気づくことができたのだろうか?それはジェイソンはすでに入れ替わっていているから敏感になっている。

・プルートは他のドッペルゲンガーと違ってハサミをもたない。しかも攻撃しようともしない。明らかに行動が他のドッペルゲンガー違う。

・プルートはふがふが呼吸をしているけど口を開けることが全くないししゃべらない。この意味は火傷で口まで繋がってしまったんじゃないかということ。どうやって食事しているかはわからないけど。口の間に少しだけ隙間があれば生ウサギは食べられないけどウサギの血は飲めるかもしれない。本人はしゃべれるはずだけど口が繋がってしまっているからしゃべられない。

出典:IMDb

・顔に焼けどをおっているプルートは火を簡単につけるけどジェイソンは簡単には付けられない。ドッペルゲンガーは貧困のメタファーなため、貧困な人は裕福な人より家庭環境や教育問題で食べているものなどから問題を抱えて裕福な人と同じことができないことが多い。そのため地下の人だったジェイソンは表の行動通りにうまく火をつけようとしてもできない。指に問題を抱えていたのかもしれない。うまくできないから表の人が火傷をおっても地下にいたジェイソンは火傷をおわずに助かった。

出典:IMDb

・ジェイソンがプルートを制御できた理由に、もしドッペルゲンガー(テザー)達が作られた最終目的が表の人を制御することだったとしたら、ジェイソンは入れ替わっているプルートを制御できてもおかしくない。ほとんどのドッペルゲンガーは失敗作でコントロールできないけどジェイソンはたまたまできた。ドッペルゲンガー達は表の人と同じような行動を地下でしていて表の人がジェットコースターに乗っているときは地下でも真似をする。これは最初は表と同じような行動をするように作られたドッペルゲンガーだけど徐々にドッペルゲンガー達が表の人をコントロールするようにしていくのがテザー達の宿命だったんじゃないかということだ。そしてプルートが攻撃しないのもすでにコントロールされている部分があったからじゃないかと思うしハサミを持ってこなかったのもジェイソンにある程度コントロールされているからじゃないかと思う。11:11の時計をアデレードに教えてまるで事件が起こることをすでに知っていてかのように見えるジェイソンはドッペルゲンガー達が立ち上がるのを歓迎している部分があってプルートをコントロールして来させないようにするわけでもなく来たらコントロールして燃やしてしまう。ジェイソンは他の家族より恐怖が薄いように思うのも入れ替わっていてコントロールできると思っているからじゃないかと思う。ドッペルゲンガーが人をコントロールするための物と考えられるもう一つのことは、ビーチで双子の姉妹が同じ行動をとるというのを見せる。現実社会でも双子は似たような行動をするらしいがドッペルゲンガーには双子の性質があり同じような行動はするが普通の双子と違ってコントロールするための実験された人たちなんだと思う。擬似的に双子のようなものを造り、どうにかして意思の疎通、行動、感情などすべてをコントロールしようとしたんじゃないかと思う。テザード(The Tethered )は繋がられた、縛られたとかという意味。

・最後にアデレードがジェイソンを見て怪しげな顔をするのはジェイソンは地下の人だと気づいたから。

政府がドッペルゲンガーを使って表の人をコントロールしたかったとして政府の目的は何だったのか?この答えは明確には出ないが裏の人が操る話は他の映画にある。例えばトゥルーマンショー、ダークシティとか。

トゥルーマンショーでは主人公だけ作られた世界で生きていることを最後あたりまで知らなかった。そして主人公はビジネスのために使われたいた。ダークシティでは裏の生物たちが人の心理を研究するために人をコントロールしていた。ドッペルゲンガーで表の人を操作することでビジネスや研究に使えると考えるとアメリカならありえそうな話だ。なぜならアメリカではマスコミの世論調査が日本よりないように見えて意外とあり世論調査だけでなくCIA元調査員エドワード・スノーデンの機密情報についての告発などもあった。アメリカは裏に隠して今でも何がおかしなことをしているんじゃないかというのがあるからこそドッペルゲンガーが政府によって裏で表の人をコントロールしようとして作られたものとしても科学的な部分はおいといてアメリカっぽい話だと思う。最近の話ではフェイスブックの個人情報の流出しNetflixの「グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル」で情報は選挙に使われていたと言われている。資本主義が行き過ぎているアメリカではビジネス重視になり間違ったことを裏でやったり詭弁で国民を騙したりしてきたんじゃないかというのは調べればたくさん出てくるし、上で説明してきた隠れて政府主導で行われたタスキギー大学の黒人への人体実験なども含めて監督がそういうアメリカを皮肉っているんじゃないかなって思う。

レッドは愛に包まれていて魔法少女が世界を救おうとして失敗したお話のようにも見える

すこし話がそれて映画では言われていないことだけどレッドの気持ちを考えるとレッドには愛が溢れているんだと思えてくる。愛と宗教は密接にある。なぜレッドは神のような存在と思い聖戦のようなことを起こしたか?これはキリスト教が生まれた意味も考えると少し見えてくる。キリスト教は一神教であり古代ユダヤ人によって信仰されたものが今でも残っている。古代ユダヤ人は苦しい時代が続き周りの国が多神教なのに一神教を信仰したのには辛いからこそ神にコンタクトをとりたいと思い、一人の神のほうが神を近く感じると思ったからだと思う。辛いところから生まれたのがキリスト教の一神教なのだ。レッドは地下に誘拐されかなり辛かったに違いない。辛いからこそ神を信じけ少女のころから祈り願い続けただろう。そしてたぶんある日レッドは神のお告げを聞くのだ。「私達は神に試されたんだ」というのはレッドは神のしたいことに気づいたと思いお告げ聞いたと思ったのだ。実際に黒人は辛い仕打ちをうけてきたわけでアメリカでも貧乏な地域や黒人が集まる南アメリカでは信仰心が厚いようにレッドからはとても辛い気持ちがわるかのだ。レッド達の聖戦とはまるでクリスチャンのブッシュ大統領がイラク戦争は神の考えであり聖戦のような考えで進めてきたのと同じような感じがある。それを多くのクリスチャンが支持し祈りイラク戦争という聖戦が実行されたのだ。この宗教背景が映画にもあって一神教では神は一人のため表の神に背く異教徒と地下の一神教の神に愛される集団の戦いであり異教徒討伐をする十字軍のようなことをレッド達はしたと考えるととても考えさせられる。歴史は繰り返される。ただのアメリカの分断への抗議ではなくレッドが神を強く信仰しなければいけなかったそしてアメリカにある越えられない分断の深刻さは日本では分かりづらいと思うのでそれなりに知識がないと映画が見せる現実味が伝わらないんじゃないかと思ったりもする。それがアメリカで映画アスは人気があって日本ではアメリカほどでもないということだと思う。しかし上で説明してきたように宗教が含まれていることを知って意味を知ってアメリカの歴史を知ったうえで見直すとものすごさがわかるんじゃないかと思う。

監督は語ってはいないけどレッドはアーサー王の魔法使いモルガンのような位置づけでもあると考えるとレッドは魔法使いで少女の頃から祈り願い続けた魔法少女のようなものなのだ。大人だけど子供のころに誘拐され閉じ込められて精神は子供のまま。自己犠牲により世界を変えようと少女が魂の抜けたゾンビみたいな人を率いて戦う反逆の物語であり神話みたいな話なのだ。世界を救うのも、国を変えるのも愛、愛がなければ変えようと思わない。一人の誘拐された少女が大人になり守り続けてきた愛を愛の欠けた世の中を変えようとした愛の物語であり本人にとって死ぬという悲劇が起きることで考えさせられるカタルシス(精神の浄化)なのだ。アニメのように魔法で奇跡が起こるなら素晴らしいんだけど、神のお告げにより魔法処女になることと契約し魔法が使えるかのように全知全能感がたかまったのだろうけどレッドの死は魔法はないんだということでもあり現実をみなくてはいけないということなんだと思う。でもレッドは悪魔、狂信者になってしまった。それがわかるのが映画のウサギのシーンでかかる曲のおどろおどろしい聖歌。作曲した人によると悪魔の行進がテーマとしてあると言っている。ブッシュがやったようなクルセード(十字軍の聖戦)という名なのもとで行われた報復と同じようなことをレッドはしてしまったのだ。そしてハンズアクロスアメリカはどこまでも続くかのように見えるメキシコの壁を思わせながらもブッシュが名づけた無限の正義や不朽の自由という作戦名の皮肉にも見える。それはアメリカの自由とは何なのか?アメリカの民主主義とはいったい何なのか?というアメリカの根幹に関わることを無意識にでも監督が言わなくとも伝えているように思えてくる。そしてそれでもレッドは神の愛に溢れていて息絶えるまでミラーハウスで少女の頃に吹いていた好きだと思える口笛Itsy Bitsy Spider(小さいクモ)をアデレードの前で吹くのだ。その純粋さの悲劇がなんともかわいそうだ。

死にそうになりながら口笛を吹く↓

子供の頃にミラーハウスで迷子になり口笛を吹く↓

口笛のItsy Bitsy Spider(小さいクモ)の意味は恐らく小さい頃では子供が好きな曲だっただろう、でも大人になりクモを通していろいろ意味を考えたに違いない。クモは糸にかかれば抜け出せない支配された人の意味があると思う。これはクモが出てきてドッペルゲンガー映画である「複製された男」に似ている。レッドにとって好きだった曲だけどレッドは死ぬときもアデレードに向かってコントロールされているんだ、と訴えていたのかもしれない。

映画アスは忘れられている貧困者達がテーマではあるものの民主主義に関わる話なため貧困問題だけ話ではなくなってくる。自由を求め選択肢が多くなり自分だけの幸せを追いかけることができるようになる、でもその結果、忘れられる人が出て社会に亀裂がでてきているのが現代なんじゃないかと思う。新自由主義による規制緩和で自由が広がるように見えて本当に自由になり幸福になったのだろうか?情報が溢れているインターネットやSNSでみんな幸せになれているのだろうか?
自由は限界を見せ付ける。古代アテナイ社会でヘレニズム文化によって民主主義、自由が広がっていくが伝統的な信仰や神話から離れることで心のよりどころを求め哲学が発達する。ただ自由なだけでは人は幸福にはなれないのだ。アメリカはトーマス・ジェファーソンが独立宣言をし「生命、自由、幸福を追求を求める権利は全ての人々に平等に与えられている」ということを言っている。そのため現在のアメリカでは他国に比べて自由に選択できることが非常に多いと思うけど自由により広がった格差を埋めるかのように今叫ばれているのは自己責任だけでは無責任だということだ。アメリカが自由を求めすぎた結果、自分がやっていることが正しいと思いすぎている人が多くて車の運転さえ傲慢でめちゃくちゃな人が多いことも映画アスからは考えさせられる。

まとめ

ウサギ=怖い存在(監督にとって)共食い(宗教上キリスト、神になる)、耳がハサミ、実験動物、ナチスの人体実験の名前がウサギ、地下にいる精霊、魔女、繁殖、幸せの象徴

赤い服=赤い蟻(ネイティブアメリカンの神話)、スリラーの服、一般的なオレンジ色の囚人服、仏教徒の服(オレンジ色だけど似ている)、全体主義、共産主義、キューバの極悪な刑務所の赤い囚人服、神(ネイティブアメリカンの神話)、太陽神(ネイティブアメリカンの神話)、アメリカ先住民達(赤みがかった肌色であり儀式で赤色が使われる)

レッド=自分を神だと思っている、魔女モルガン(アーサー王と円卓の騎士)、リーダー(リンカーンやキング牧師にような人)

クローン(ドッペルゲンガー)=貧困者、ホームレス(映画チャドなど)、影であり裏の存在(ゲド戦記のクモ、置物のクモ、伸びる影、フレディの手袋)、黒人奴隷、人体実験の被害者(タスキギー大学での黒人人体実験)

エレミヤ書11章11節=契約破棄(実験によって従順になっていたクローンが従うことをやめる)、神によって破壊(レッドが神、創造主)、災いが起こる予言、預言者エレミヤは映画内で登場。

11:11=エレミヤ書、無政府主義者(アメリカの有名なバンドTシャツ)、相反するもの、特別な領域(天使の領域など)、神や天使からのメッセージ、幸福のサインのエンジェルナンバー

ハサミ=分断するもの、骸骨、相反するもの、ウサギの耳

クローンがやっている殺人=聖戦、革命、抗議、アートパフォーマンス(Hands Across America)、奴隷解放の戦い、地底人チャドの逆襲

Us=アメリカ、私達、移民、ホームレス、不法移民、アメリカの歴史、二つの存在、相反するもの、Uとs二つに分断できる文字、アメリカ独特の問題(移民が多くアメリカ人って誰のこと?Usだよ!というアメリカでのあるあるな話で黒人が言われたりもしてきた)

他にも考察できるところはたくさんあるんだけど(イチゴ、救急車のおもちゃ、レッドのいろんな行動からレッドが表の人と分かること、アデレードの服が白いこと、他のさまざまな名前の意味、色んなセリフなど)どれもたぶん同じような内容の話しに繋がると思う。監督は英語のインタビューでも語っているけどはっきりと答えを出してないのは考えてもらいたいからと答えが人によって違うからだ。答えを求めようとするけど答えは一つじゃない。視点を変えると答えは変わってくる。映画はホラーというよりものすごく強烈な社会メッセージが込められている。アメリカ批判、全体主義批判、差別批判、愛国心への疑問を表わすのに宗教、神話、アメリカ文化、黒人問題を持ち出してきた作品だ。これらのことを知らないとわかりづらいと思ったし、同じメッセージを何度も出してくるからちょっとしつこく感じたりもした。いろいろなものを詰め込みすぎていてよく考えたなーって感心した。黒人に対する行動を変えて欲しいという強いメッセージは人の考えを変えると思うので、政府主導でなくとも広い意味でプロパガンダと言ってもいいんじゃないかと思う。プロパガンダはカトリックから始まった語源で似た単語でプロパゲイトというのがあって繁殖させるという意味がある。プロパガンダだから悪いわけじゃなくて訴えたいことがあるっていいと思う。またアメリカでは平等に対する意識がものすごくあって、映画アスも不平等、格差からくる分断なのでポリティカルコレクトネスを叫んでいるともいえる。政府の陰謀で作られたドッペルゲンガーだから政治の正当性のポリコレを言うのは矛盾しているけれども、何が平等で何が正しいのかを考えさせることはポリコレに通じるし映画アスはリベラル思想全快の映画といえるからポリコレ。だけどアメリカにあるポリコレは本当に平等な視点で見ているの?という皮肉もあるのだと思う。それが監督が嫌ったハンズアクロスアメリカ。今のポリコレ批判がもし含まれているならこれはすごいことだと思う。なぜならアメリカのリベラル、フェミニストを批判してドナルドトランプだけじゃなくてアメリカの政治の仕方、考え方まで変えるという話になってくる。映画を見た人が不平等、貧困、黒人のことを考えないと、アメリカは分断されている、ドナルドトランプは最悪だ!アメリカにある盲点を考えさせられるだからポリコレを考えることは大切なんだというところまではなるけど、実は今のポリコレも批判していてアメリカの資本主義のあり方を考えさせ、さらにアメリカにあるアメリカは資本主義で競争が重要なんだという考えに対して疑問をなげかけ社会主義と資本主義の対立が加速しそうだし、映画の世界でもポリコレに気を使っているわけで、アカデミー賞にノミネートされた作品の映画アスが実は映画業界さえも批判していたと思うとすごいと思う。そもそもアメリカの映画業界は黒人、アジア人のノミネートが少なく白人に偏っているのは有名。今のポリコレは気にしすぎじゃないか?と思うぐらいの部分があって気にしすぎてケンカになったり生き辛かったり社会が空回りしている部分ってあるんじゃないかなーとアメリカを見ていて思う。監督に批判がきたり大論争になってもおかしくないんだけどなっていないのはアメリカ人も今あるポリコレという考え方まで批判しているかもとはそこまでは考えていないんだと思う。そして映画では銃が出てこないことでもしかして本心は分からないけどアメリカの銃問題も皮肉っているのかな?って思ったり。裏の裏の裏設定だともしかしたらそこまで批判しているんじゃないかなーって思ったりできるのは映画がアメリカの皮肉に溢れているからだ。でも僕は結局アメリカは変化は早いけど根本的なことは変われないのかなって思わされたりもするけど、そんなすごい批判しているかもしれない監督にぶるぶるぷるぷるしてきちゃう 笑

あと、たぶんだけどハンドアクロスアメリカがあった1986年はアメリカにとって転換期だったんじゃないかと思う。黒人の問題、貧困の問題はあるけど今より福祉が整っていて人々が今より分断されていなくて今より人々に生きる上で安心感があったんじゃないかと思う。それが間違った勘違いした安心感だったとしても今より社会全体で安心感があったんじゃないかと思う。新自由主義を進めてきたレーガン大統領がどんどん福祉を縮小するようになって今のおかしな社会があるんだと思う。見られていない貧困者は1986年頃に存在しているけど、それでも今よりアメリカは良かった懐かしいなぁという感情を監督は持っている部分もあるんじゃないかと思うし新自由主義によって思想も完璧に個人主義が進んだ現在のアメリカにおかしいと思っているんじゃないかと思う。そうじゃないと貧困者を気にする人は出てこないし映画アスみたいなことになる。実際にホームレス個人レベルでは攻撃する人もアメリカでは出てきている。まるで映画アスの貧困で怒りがたまっているドッペルゲンガーみたいな状況だ。僕もホームレスにナイフを向けられたことがあるのでいつ見られていない貧困者たちが殺人をするのか時間の問題なんじゃないかとさえ思う。ホームレスだけではない白人黒人アジア人の銃乱射など毎年アメリカではあり精神的な貧困は黒人だけでなく白人やアジア人にも広がっている。そういうのもあって実際に昔が良かったって思う人はたくさんアメリカにいて特に80年代とか70年代とか良かったって思う人は多いと思うし黒人だけじゃなくて白人にも他のアメリカ人にも経済貧困問題を考えてもらうために多くの人が懐かしい、良かったと思う86年を取り上げた部分もあったんじゃないかと思う。最近80年代もののオマージュとか人気だし、ただ貧困とか政治問題だけを取り上げても一般ウケしづらいからビジネス目線でどうすれば売れるかというアメリカで受けそうなトレンドを考えての86年だったんじゃないかと思う。

あと監督が黒人目線で作っているからだと思うけど僕としてはアジア人とかどうなの?って思ってしまった。移民したアジア人だってたくさんいて苦労しているわけだし、映画の中でほとんどというか全くアジア人が出ていないと思うのも気になるところ。それに二つを一つにするっていう一神教みたいな話になっていて一神教の思想を監督は持っているだろうから白人と黒人の間に生まれた監督としては生きづらい何かがあるのかもしれない。いっそ一神教をやめればいいなじゃないかとさえ思う 笑
一神教ってケンカがあるイメージだし。
善と悪の境界線を曖昧にした映画は面白いんだけど結局クローンがやったことは表の生活をしていた人がやったHands Across Americaと同じことをしてこれから同じ生活をしていくのかと思うとクローンも表の人と同じなんだなって思ってしまったし、クローン達は新しく生まれる貧困を見て見ないふりするんじゃないかなって思った。レッドは繋がれた存在のクローンが人間であることを知ってほしかったはずなのに、殺し合いをする必要はあったのだろうかと思ってしまう。それだけ信仰心が強く全知全能感に支配され悪い方向に思考が傾いていたというなら話はわらかんでもないけど。

映画は面白かったし色々考えさせられ僕自身も勉強になった。学校で学生の宿題に使える映画ではないかと思った。

関連コンテンツ



スポンサーリンク
レスポンシブ 広告
レスポンシブ 広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする